おお君の辺にこそ死なめ。

先日の会話。
卒論「もし戦争になったら、先輩も戦争に行っちゃうのかなあ」
K村「そうなるかもしれないねえ」
卒論「やだなあ」
K村「私も、卒論を残して出征するのは心配だな」
卒論「あたし体弱いから、戦争になったらすぐ死んじゃうと思うな。栄養失調とかで」
K村「えー。戦地の私より先に死ぬのかよ」
卒論「そう。戦争が終わって先輩が帰ってくると、あたしは死んでるの」
K村「うあー。生きて日本の土を踏むことを夢見て、血を吐くような思いをしながら何年もシベリアで耐えて、遂に日本に帰ってきたと思ったら……」
卒論「シベリアて」
 
陸軍歩兵連隊かな?
 
架空戦記ですね。
 
それって普通はもっと華々しい内容のような気もするけど。
 
えー、私も日本人として、東京に行ったら、一度は行っておきたい、というところがありました。
 
そんなわけで、東京旅行の二日目、行って参りました。
 
靖国神社参拝。
  
メイド喫茶をあきらめて靖国参拝とはなんと愛国的な。
 
いや、靖国、というと、先の大戦で政治的に利用された嫌いが強く、やれ軍国主義的だの侵略戦争の正当化だのと言われますが、それは違います。
 
そもそも、靖国神社の前身である東京招魂社は、戊辰戦争戦没者を祀るために創建されたものです。
その後も、私たちの国、日本を守るために命を捧げた方々を、等しく祀ってきました。
 
つまり、靖国神社参拝とは、祖国を守るために斃れた方々に敬意と哀悼の念を表し、現在の日本の平和のありがたさを噛みしめ、平和の誓いを新たにする行為なのです。
ですから、私としては、平和主義を標榜する人々こそ、むしろ率先して靖国を訪れるべきではないかと考えます。
 
まあ、うちのじいちゃんばあちゃんはみんななんとか戦争を生き延びたから、身内は誰も靖国にはいないんだけどなー。
 
さて、初めての靖国参拝、重度の方向音痴の私は不安でいっぱいだったのですが。
 
地下鉄駅を降りて地上へ出たとたん、彼方にそびえる大鳥居に圧倒されました。
 
一口に「鳥居」と言っても、様々なデザインがあります。
そして、それぞれに「八幡鳥居型」「明神鳥居型」などと分類名も付いているのですが、靖国の大鳥居は、むしろそのシンプルな意匠故に、ひときわ印象深い物になっているように思えます。
ちなみに、靖国神社の大鳥居のデザインは、その名も「靖国鳥居型」と呼ばれています。
 
空を背にすっきりと立つ大鳥居に、素直に畏敬の念を感じました。
真偽のほどは不明ながら、我が国に危機が迫った際には、この鳥居が巨大ロボに変形して日本を救う、という説にも、なるほどうなずけるものがあります。
 
その下をくぐる参道も幅広く、観光バスが3〜4台くらい並んで通れるくらいの幅がありました。
片側二車線。
あの幅だけで、うちの地元の神社の参道の長さを超えているんじゃないかと。
 
もちろん、実際には鳥居の脇に小道があって、バスで鳥居をくぐるなんて不埒な真似はできないようになっているわけですが。
 
しかし、バスを確認したら、「〜〜相撲道場」だの「〜〜空手道場」だのが多かったな。
……これだから体育会系は。(偏見)
 
境内にはたくさん木が植えてあり、その多くにプレートが掛けてあります。
 
木の名前が書いてあるのかな、と思って(学校関係者ですから)見ると、
 
「北支派遣第〜〜部隊 独立輜重兵〜〜連隊」
「陸軍特別攻撃隊 振武〜〜隊 〜〜名慰霊」

 
甘かった……。
靖国境内に生い茂る木々は、どれもこれもこうした献木であり、一本一本に英霊が宿っているのです。
 
いやしかし、これを軍国主義うんぬんと結びつけるのは短絡的に過ぎます。
 
共に祖国日本を守るため戦い、そして死んでいった戦友を悼む気持ちは、人間として当然のことではないでしょうか。
 
平和の誓いを新たに。
 
そして参拝したわけですが、見回すと、勝手に想像していたのとは違い、若い参拝者が多いのが印象に残りました。
戦争の時代は去って久しくなりましたが、それでも、こうして世代を超えて靖国の祈りが引き継がれているのを目のあたりにすると、日本の将来は安泰だ、と思えますね。
 
さて、参拝を終えたわけですが、広い靖国の境内には、「遊就館」という建物があります。
 
これはまあ資料館というか博物館というか……
 
おお! あのガラス越しに見えるのは、我が帝国海軍の誇り、栄光の零式艦上戦闘機では!
 
えーと。
 
遊就館、玄関ホールにゼロ戦が飾ってあるんです。
 
あと、15センチカノン砲とか、榴弾砲とか。
 
ああ、やっぱりカノン砲ってでかいんだなー、と。
今まで写真で見ても実感がわかなかったんですが……。
 
……あ、いや、軍国主義とかではなくてですね?
ほら、蒸気機関車も一緒に飾ってありますし。
 
「かつてタイ、マレー、ビルマで物資補給に活躍した泰緬鉄道の蒸気機関車
 
……えー……。
 
入館料は800円です。(玄関ホール・売店・食堂は無料)
 
奥に進むと、「武人のこころ」「日本の武の歴史」などとして、まず戦国時代の太刀・鎧兜などが展示されています。
 
ほら、侵略戦争とか無関係なんですよ。
 
「武人の心」では、過去の武人や、あるいは天皇御謹製の和歌が掲げてあります。
もちろん古文なのですが、現代語訳も併せて示してあるので大丈夫。
 
なんか、おそろしく恣意的で偏った現代語訳のような気がしましたが、それは私の心が東京裁判史観に毒されているせいでしょう。
 
海行かば 水漬く屍 山行かば 草生す屍」……とかあのへん。
 
さらに観覧コースを進むと、次第に時代は下り、日清・日露戦争の時代へと。
 
日清戦争では、当時のえらく威勢のいいニュース映画とかが見られます。
 
我が軍破竹の進撃を、地図上で動く矢印や実写映像で示したもの。
もちろん、コンピュータなどない時代、技術的には拙い物ですが(そもそもモノクロだし)、演出などは現代にも通用する……
 
……内容?
いや……それは……。
 
えーと、パネル展示では、その時代の日本を取り巻く情勢が、やはり地図と文章でわかりやすく解説されています。
 
迫り来る欧米列強! アジア植民地化の危機!
 
なにか、三国干渉の解説パネルを読んで苦笑してる人がいましたが。
 
おのれ非国民め!
 
……ていうか、明らかに日本人じゃない様子でしたが。
 
でも、案内していた日本人も苦笑してたね。
 
まあ……、三国干渉くらいで「屈辱」「臥薪嘗胆」とか言ってる、ってのは、「日本は外交音痴です」って触れて回ってるようなもので。
あの程度の外交戦術、我が国が駆使できるようでないと……(苦笑)
 
小村寿太郎を外相になんかしちゃだめだよ……。*1
 
ああ、遊就館の展示は、全て日本語に加えて英文も表示してありますので、日本人でなくても不都合はないのです。
こういったこと一つとっても、靖国=対外戦争正当化、みたいな図式化がいかに滑稽かがわかるでしょう。
靖国の祈りは世界の祈りなのです。
 
中国語? 韓国語?
 
靖国参拝に反対してる連中になんで配慮しなきゃならんのですか?
三国人どもが靖国に参拝したいというなら、まず日本語を勉強すればいいだけのことで。
そもそも我が国は満州など、進出した東亜各国に学校を作って日本語教育を行ったり創氏改名(以下略)
 
まあ、深い意味はなくて、要するに「第一外国語」として英文を選んだ、ということなんでしょうね。
でも、靖国に拒否感を示している国の人たちにも、靖国神社の立場や主張を広く理解してもらおう、という姿勢もあってもいいのかな、と思いました。
 
……読んだ後その主張を認めてくれるかどうかは知りませんが。
朝鮮日報
 
日露戦争のコーナーでは、戦争の経緯を、パノラマ映像で見ることができます。
 
(ナレーション)「……こうして、戦闘は我が方の大勝利に終わったのです」
 
いや、さらっと「我が方」とか言わないで下さい。
 
……よく考えると、NHKとかって、太平洋戦争の話をする時、決して大日本帝国のことを「我が国」って言わないよな……。
「日本」とは言うのに。
 
大体、日露戦ってほんとにそんな大勝利でしたか。
 
日本海海戦は、確かに近代海戦史に残る大勝利だけど、戦争全体は辛勝に近いし。
 
(ナレーション)「……6万の死傷者を出したにもかかわらず、乃木将軍はステッセル将軍らに帯剣を許し、我が国の武士道の精神は、世界に……」
 
いや、だから、旅順攻略に6万も死者を出しちゃだめなんだったら。
近代要塞に正面から突撃をかけさせるのが間違ってるんだって。
 
203高地まで「大勝利」かよ!
 
で、まあ、どんどん進んでいくと、「桜花」とか「回天」とかも出てきます。
この辺の特攻兵器って、どう考えても軍部の狂気としか言いようがないわけですが、靖国神社的には「祖国を守るために散った=立派」っていう視点ですから、誇らしげに展示してあるという……。
 
中に乗っていた人の覚悟はあるいは立派なのかも知れないけど、主導した人らはたぶんあの世で兵卒らに袋だたきにされてると思うぞ。
 
……いや、乃木将軍は、「軍神」として別に乃木神社に祀られてるから、靖国にはいないのか。*2
よく考えると、インパール作戦の牟田口中将も、ノモンハン事件の辻参謀も、戦史で評判の悪い連中はあんまり靖国にはいないのか……?
 
南方で回収された、戦没者の遺品とともに、旧海軍の軍艦の模型が飾ってあったり。
 
と、ここで、後ろから小学生の男の子たちが追いついてきました。
 
「うおーすげー、戦艦だ戦艦!」
ああ、坊やたち、「高雄」は戦艦じゃなくて重巡洋艦だよ。昔、ワシントン条約というのがあってね。*3
「戦車だ戦車!」
ああ、97式中戦車は戦車なんて呼べる代物じゃないよ。M4シャーマンに勝てないんだから。*4
 
「大和さがそうぜ大和!」
「なんか、これ両方そっくりじゃん!」
そうだねえ、大和と武蔵は同型艦だからね。
 
このような小国民たちが遊就館にやって来ているとは。
 
将来は安泰。
 
「蘘國の神々」コーナーには、靖国に祀られている英霊たちの写真が、通路の壁を埋め尽くすようにして飾られています。
さすがに、粛然とした思いにとらわれました。
これほど大勢の方々(これでもまだごく一部なわけですが)が、若い命を失って、代わりに我々が得たものはなんなのでしょう。
 
一人一人名前が書いてあるんですが、全員「〜〜命」って書いてあるのがなんとも。*5
 
で、観覧を終えて売店
いろいろなグッズを売っています。
DVDとか売ってましたよ。
 
「平和の誓約(うけい)」とかいうアニメとか。
ほら、平和の誓いを新たに。
 
それから「ブルーインパルス全史」とか。
 
いや待て、ブルーインパルスは英霊と関係ないだろ。*6
 
ブルーインパルス命!
 
もしも「桃太郎の海鷲」「桃太郎 海の神兵」とかが売ってたら絶対買ってたんだが、なかった。残念。
本気で探したのに。
(この辺に詳しい→http://www2.ttcn.ne.jp/~heikiseikatsu/eishou/momotaro.htm
 
あとは、日本刀(模造)とか、いろいろ。
 
のらくろグッズもありました。
 
ぴくせる☆まりたんはなかったな。
 
平和の誓い。
 
それから、食堂にて食事をとりました。
何「海軍カレー」って。
 
「旧海軍のカレーを再現」ですか。
せっかくなので頼んでみました。
 
頼むと、お盆の上に、カレーと一緒に説明書きが乗せてあります。
「当店の海軍カレーは、明治四十一年九月に発刊された海軍割烹術参考書のレセピーに基づいて、その時代の味を忠実に再現致しております。思い出の味を、または心の歴史の旅をどうぞ」
 
心の歴史の旅。
 
それはあれですか、戦後生まれなのにシベリアに抑留されたりという。
 
脳内戦史架空戦記
 
いや、普通はもっと華々しいのかも知れないけどなー。
 
……で、味は……。
えー……、レトルトカレーを水で薄めて、片栗粉でとろみを付けて、ケチャップで味を調えたような、というか……。
 
要するにまずい。
 
なるほど、カレーと一緒に説明書きを改めて出しておかないとクレームが付きそうな味です。
 
まあ、仕方ないよなあ。
 
シベリアじゃあ、もっとひどかったものなあ。
海軍だって、戦争末期はもっとずっと悲惨だったんだし。
それこそ「飢島」*7とか。
 
いや、私は陸軍育ち戦後生まれなんで、脳内従軍経験でも海軍カレーの味とは無縁というか。
 
ともあれ、「海軍カレー」。
海軍時代に華々しい戦果を挙げて、大東亜戦に郷愁を覚えておいでの方は、ぜひ一度お召し上がり下さい。
主に脳内海軍出身者。
 
……とまあ、靖国体験をだらだらと書いて参りましたが、帰りに交通安全のお守りを買って帰りました。
このお守りで、千里行って千里帰りますよー。
 
ああ、燃料が片道分しか!?
 
でも、機体故障で不時着して、原住民に助けられて帰って来ます。
 
すると中隊長から「貴様なんで生きて帰ってきた!」「死ぬのが怖いのか非国民!」とか罵られてもう一度送り出されるという……。
 
華々しい脳内戦争体験。
 
……まあ、大事にします。
 
ともあれ、またしても観光気分で行った靖国神社でしたが、いろんな意味で思い出深い場所となりました。
 
日本人なら一度は参拝すべきだと思いますよ、ええ。
 
ここ(Wikipedia)の写真は、遊就館玄関ホールのものと思われる→http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%B6%E5%BC%8F%E8%89%A6%E4%B8%8A%E6%88%A6%E9%97%98%E6%A9%9F
(奥に見えるのは食堂「結」。海軍カレー
 
K村「戦後何年も経って、やっとシベリアから復員してきたと思ったら、卒論は死んでるのか……」
卒論「そう、近所のおばちゃんとかが、『ずっと待ってたんだけどね……』って言うの」
K村「お墓の前で泣き崩れるしかないな、それは」
卒論「戦争ってやだね」
K村「そうだなあ……」
 
平和の誓いを新たに。
 

*1:日露戦争後の外交交渉を担当した人。真面目で誠実、マスコミに媚びを売るなんて考えもしない、まさに侍。つまり一番外交交渉に向かないタイプ。

*2:もっとも、203高地の屍山血河は、乃木将軍一人の責任と言うよりは、近代の陸戦についての理解が不足していた日本軍指導部全体の問題なのですが。

*3:いわゆる「ワシントン海軍軍縮条約」のこと。
絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」ができるまでは、この条約が「ワシントン条約」と呼ばれていた。

*4:97式は、「匪賊」を蹴散らすのには使えても、敵の戦車に出くわすと蹴散らされてしまう戦車。
M4シャーマンアメリカ軍の戦車で、これまた歩兵支援が目的で対戦車戦は想定していない戦車だったけど、97式はそれに蹴散らされた。
ていうか、ノモンハン事件の時点で性能不足は明らかだったが、軍部は敗北を隠し、結果的に97式の改善も遅れる結果となった。

*5:祭神だから。
大国主命オオクニヌシノミコト)」とかと一緒。

*6:航空自衛隊第4航空団第11飛行隊。エアショーでデモンストレーションをやる飛行隊。

*7:ガ島。ガダルカナル島