H18 虫歯予防作文コンクール

作文コンクールの児童作品紹介なんかを読んでいると、つたないながらもちゃんと意味の通る文章ばかり掲載されています。
しかし、現実の教室では、なんだかわけのわからない文章を書いてくる子も多いので、それをちょっと整理して、意味が通じる文章になるよう指導するのも、担任の仕事になります。
 
先日、子どもたちは、虫歯予防に関する作文を書きました。
 
A児が書いた作文から。

ようち園の時、前歯がむし歯になってしまいました。
お母さんが、
「歯をみがかないからでしょ。」
と言いました。
それで歯いしゃさんに行ったけどなおせませんでした。
その後また生えてきました。
それでかがみで見たらまっ黒でした。
今は大人の歯になったので、ちゃんと歯みがきをしてむし歯にならないようにしたいです。

A児の前歯は、真っ白な永久歯です。
 
なんかよくわからないけど、どうも文章の順番が時系列に沿っていないんじゃないか。
 
「ねえねえA児」
「何?」
「この作文、ちょっと、一体どういう状況なのかよくわかんないんだけど。説明してくれる?」
「あのねえ、ようち園の時、チョコレートとか食べてそのままにしてたから、前歯が虫歯になっちゃったの」
「それはわかった。 それで、その後に生えてきた歯を鏡で見たら、虫歯で真っ黒だったんだよな?」
「うん」
「……で、A児、君の前歯は真っ白なんだけど、それはなんで?」
「んー、だから、虫歯の歯が抜けて、大人の歯になったから」
「いやでも、生えてきた歯が真っ黒だったってのは?」
「虫歯だから」
 
いやそれはそうなんだが。
 
「えーと、それじゃあさ、虫歯の時、歯医者さんに行ったんだよな?」
「うん」
「でも治せませんでした、ってのはなんで?」
「あのね、虫歯の歯がひっこんでたから」
 
……?
 
「なんと?」
「虫歯になった歯が、歯ぐきの中にひっこんでたから、なおせなかったの」
 
不思議時空発生。
 
「あー、何、つまりさ……(黒板に図を描きながら確認)

  1. こういう風にちゃんと生えてた歯があって……
  2. それがこう虫歯になっちゃって……
  3. それで、歯医者に行った時は歯茎の中にめり込んで治療できなかった

……ってことか?」
「そう!」
 
そんなばかなー。
 
「それで、その後また虫歯のまま生えてきたの?」
「うん」
「で、それが今度は抜けて、新しく大人の歯が生えてきたと?」
「うん!」
 
うそだー。
 
ところが、A児と幼稚園が一緒だった他の子たちが、
 
「そうだよ! Aちゃんそうなんだよ!」
「前歯が真っ黒だったんだよ!」
「歯いしゃさんでなおせなかったんだよ!」
 
えー。
それは何か、虫歯が独自の知性を獲得して、歯医者で治療されるのが嫌で歯茎の中に隠れるとかそういうSFチックな。
 
ありえねえー。
 
しかし、事実そうだというのでは仕方がない。
 
「わかりました。……じゃあ、このまま清書して下さい」
「はーい」
 
わかりました……けど、審査員の人は読んで意味わかってくれるのかしら。*1

*1:この話を一年担任にしたら、
「乳歯が頭を出した状態で虫歯になってしまって、まだ大部分歯茎の中にあるから治療できなかった、ってことじゃないの?」
と言われました。
 
なるほど、やっぱり育児経験者は違う。
 
それなら全てのつじつまが合います。
 
……本人の、
「歯医者の時にひっこんじゃった」
……という証言を除けば。