良薬は口に苦し。

フッ素洗口、というものが始まりました。
 
フッ素は、歯の表面のエナメル質を変質(ハイドロキシアパタイト→フルオロアパタイト)させ、酸による腐食を防ぎ、虫歯になりにくくなる作用があります。
 
このため、フッ素を含んだ水でうがいをし、虫歯を予防するのです。
 
アメリカやフィンランドを初めとするヨーロッパ各国では、水道水にフッ素が添加されており、日本でも、練り歯磨きの多くにフッ素が含まれています。
8020運動(80歳で20本、自分の歯を残そう、という運動)を達成するためには、フッ素の積極的な利用が不可欠であるとされています。
 
フッ素が人体に有害で、斑状歯とガンとアルツハイマーダウン症と骨折と骨肉腫の原因になる、という主張も存在しますが、えーとですね。
 
そう、フッ素は人体に有害であり、水道水にフッ素を添加する、という政府の政策は、我が合衆国を弱体化させようとする共産主義者の陰謀なのです! Terrible!
 
まあ、水道水へのフッ素添加に反対する人は、(冷戦下のアメリカ以来)どこにでもいるんですが、フッ素洗口事業にまで反対する人は、ほとんど日本にしかいません。
 
とはいえ、小さいお子さんの場合、うがいの後洗口液をきちんとはき出せない場合もあります。*1
フッ素洗口液を多量に飲み込んでしまうと、やはりフッ素中毒が起きる可能性がありますので、お子さんの学校でフッ素洗口が行われている場合は、他の子の洗口液を奪って飲み干したりしないよう、ご家庭でご指導下さい。
 
洗口液を0.5リットルくらい一気飲みすると、中毒の危険性があります。(ちなみに、一人分はおちょこ一杯くらい)*2
 
さて、フッ素洗口に用いられる洗口液は、香料が添加されていますが、基本的に味はありません。 
 
洗口液を使った後、どうしても水で口をすすぎたくなりますが、それでは効果が無くなってしまうので、その後30分は水を飲んだりしない必要があります。
また、フッ素洗口さえすれば虫歯が防げる、というものではなく、やはり日常の歯磨きや食生活上の注意が必要です。
 
と、そういったことを指導するために(いや、Terrible! とか抜きで)、初回は学校歯科医が来校し、子どもたちに教室でやり方を指導してくれました。
 
歯科「何か質問はあるかな?」
A児「どんな味がするんですか?」
歯科「うん、にがーい味がします。」
B児「えーっ!」
 
えー。
 
歯科「一人一人違う味がします。いい子には、おいしい味のやつを渡しました。 辛い味がした人は、今日からもっとよく歯を磨かないといけない子です」
C児「ええーっ!?」
 
にわかに緊張感が高まる教室。
 
担任「えー。 では、1分間うがいをします。準備はいいかな?」
D児「ま、まって先生、心のじゅんびをするから」
歯科「あ、先生の分もありますから」
 
なぜか一斉に担任の顔に注目する子どもたち。
 
担任「では用意……はじめ」
 
一分経過。
 
A児「りんごの味がした!」
 
確かに、香りはりんごっぽかったです。
 
B児「苦かった!」
C児「甘かった!」
 
それは気のせいです。
 
D児「ビールの味がした!」
 
ちょっと待て未成年。
 
*ついつい子どもをおどかしたくなる歯科医の気持ちもよーくわかるんですが、おかげで一人、怖くなってしまっていつまでもうがいができない子がいました。
昼休み中ずーっとはげまして、ようやく洗口できました。
 
「あの、あたし、好ききらいおおいから……」
「いや、そういう問題じゃないから」

*1:このため、幼児の場合は「フッ素塗布」という形式で行われます。

*2:さらに5リットルくらい飲むと致死量になりますが、たぶんその前に倒れていそうな気もします。