学校事故における緊急即応態勢について(危険生物関連)

本日3校時、畑に苗を植える活動がありました。
昨年の旧鱶沢小学校では、野菜を育てるに辺り、地域の方をお招きして、色々指導をいただいたのですが、新鱶沢小の畑はそれほどの規模ではない、ということで、児童と職員のみで行いました。
 
で、2校時が終わった後、子どもたちはてんでに畑に向かっていたのですが。
 
職員室で準備している我々の所に、6年生のA男の叫びが。
「先生、大変です! 1年のB男がヘビにかまれました!」
「何!?」
 
一同があわてて飛び出すと、A男がB男の手首の辺りをぎゅっと握っています。
 
「噛まれたのは指か。 ああ、腫れてきてるな」
マムシはこの辺りにはいないとは思うが、念のため病院に連絡を」
「保護者の緊急連絡先は」
「手を頭より上に上げるんだ」
「どんなヘビだった?」
「シマヘビだったと思います」
「とっさに手首を締めて連れて来たのは偉いぞ」
「校長先生の携帯にも一報入れないと」
 
迅速な対応。
 
本校、電話回線が一本しかない上に、携帯電話が圏外なので、こういう時に不便です。
 
と、ここで、勤務年数の長い用務員さんが、
「前、ヘビに噛まれた子を病院に連れて行った時には、『どんなヘビかわかった方が適切に対処できるので、できれば持ってきて欲しい』って言われましたよ」
とか余計な有益な情報を。
 
シマヘビには毒はありませんが、同じように茶色のヘビであるヤマカガシには毒があり、死亡例もあります。
危険な毒蛇であるマムシもやっぱり茶色のヘビ。*1
注意するに越したことはありません。
 
「まだいるかな」
「さすがにもういないんじゃないですかね?」
 
などと言いつつ現場に出かけると。
 
「いた! あれです!」
子どもたちが嬉々として報告。
 
なんだかでかい茶色いヘビが、のんびりひなたぼっこしていました。
 
「さっきのB男、あれを捕まえようとして噛まれたんだってさ」
「バカだ……。ていうか、ヘビをあえて捕まえようという神経がわからん」
「…………で、どうする?」
「俺、ヘビだけは苦手なんだよ……。見るのもだめ」
「……5年のC児がヘビ平気じゃなかったっけ」
「いや、それでC児が噛まれたら洒落にならないんじゃ」
 
鈍足な対応。
 
そして、
 
「よし、情報メディア教育主任、任せた!」
「えええ!?」
 
どんなメディアだよ。
 
別に爬虫類は嫌いじゃないんですが、こんな理由で労災が適用されるのは嫌です。
 
「がんばれK村先生!」
他の先生はすでに見守る態勢。
 
「せ、せめて誰か軍手ありませんか」
「ないなー」
「がんばれ!」
 
ひでえ。
 
しかたないので、手をジャージの袖の中に入れて、袖を軍手代わりに。
とりあえずしっぽを踏んで動けないようにしたところで、子どもたちがわっと寄ってきました。
 
「がんばってK村先生!」
「そんなに近寄るな! 応援はもういい! いいから畑の方をやれって!」
「うわ、ジャージにかみついた! えい! それ、はなせ!」
「つつくなっ! いいから! 袖が噛まれてる間は手は安全なんだ……って、うわ、だからやめろって!」
「うわ口開いた! すげえ牙! おっかねえ!」
「お前らさっさと畑に行けえ!」
 
間。
 
「……んで、とりあえず動けないようにはしたんですけど、それでどうすればいいんですか?」
「あ、じゃあ、何か入れ物を持ってくるわ」
 
遅いよ。
 
その間、なんとか噛まれずに首元をつかもうと、なおもしばし格闘。
 
「頭ふみつぶしちゃったらどうですか?」
「ヘビの種類がわからなくなっちゃうと意味がないし。かわいそうだし」
 
虫を踏みつぶしたって気分が悪いのに。
 
ヘビは、どうも命の危険を感じたらしく、こっちのスニーカーだの肥料袋(捕獲用)だのに見境なくかみつきました。
ヘビは熱でものを見ると聞きましたが、無生物もちゃんと見えるんですね。思えば当然ですが。
 
で、なんとか肥料袋に追い込んで口を縛って、作戦完了。
 
「やー、K村先生お疲れ様!」
「助かったよK村先生!」
「……とか言いながら、なんで後ろにさがりますか先生方。このヘビ袋どうすりゃいいんですか」
「あー、養護教諭が病院について行くから、養護の先生に持たせて下さい」
「嫌だよあたしは! ヘビ大嫌いなんだから!」
「じゃあ、車に積んどきますね」
「あああ! せめて後部座席に置いて!」
「先生、そのヘビ、診察が終わった後持って帰ってこないでね。病院の庭先に放してきて下さい」
「袋の口開けられなくて、そのまま持ってくるんじゃないかな……」
 
大騒ぎ。
 
幸いにして、毒はない種類だった、ということで、B男も傷口の消毒だけで済みました。
 
「お疲れ様でした養護教諭
「なんか、お医者さんは、『長いこと医者やってっけど、ヘビ持ってきた患者は初めてだ』って言ってたよ」
「助かったよK村先生。 おかげで、学校からヘビが一匹いなくなった」
「そっちですか」
「校務分掌に位置付けないと。『ヘビ主任:K村』って」
「……勘弁して下さい……」
 
さて、普段は静かなはずの畑付近でひなたぼっこしていたばかりにひどい目に遭ったシマヘビですが。
 
「あれ、B男が持って帰ったよ。 なんか、じいちゃんがヘビ好きで、いっぱい飼ってるんだと」
「えー。 だったら、もっと丁重に踏むんでした」
「じゃあ、じいちゃんのために捕まえようとしたのか、あれ。」
 
ともあれ、このような緊急事態に対しても、本校では職員が一丸となって対処している、ということでした。
 
でも、ヘビ主任については、今後は地域の方にお願いする方向で提案したいと思います。

*1:というか、一般的に見られるヘビで茶色くないのは、アオダイショウくらいですか。ちなみにアオダイショウに毒はない。