反マイクロソフト主義者の陰謀だ!

義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律、という法律があります。
 
何が書いてあるかというと、要するに名前の通り。
学校で使用する教科書を、国が無償で配布する、ということを定めています。
 
で、無償の教科書を受け取るために、学校は来年度の児童生徒数に応じ、教育委員会に申請を出し、受け取った後は受領証明書を出す必要があります。
 
当然ながら、申請書の提出は年度末です。
 
忙しいのに、忙しいのに!
 
まあ、この作業をするのは、教科書関係を担当する先生なので、私は関係ないのです。
本来は。
 
数年前、この申請書・受領証を作成するソフトウェアが開発され、社団法人 教科書協会のサイトからダウンロードできるようになりました。
 
ただ、リンクは張りましたが、教育委員会から通知されるユーザー名とパスワードを入力しないと先に進めません。
 
もちろん、パスワードをここで公開するほど私は愚かじゃありませんよ、ええ。
 
ただ、あちこちの教育委員会が、「文部科学省の許可を得て、社団法人教科書協会にて提供している「教科書需用システム」を臨時で公開」してますけど。
http://info.pref.fukui.jp/gimu/18shukei.htm
パスワードはなし。
いいのかそれで。
 
ともあれ、このシステムが導入されると、予想し得たことではありますが、ソフトのインストール方法がわからない、使い方がわからない、といった声があちこちの学校で聞かれました。
 
私が初めてこのソフトと出会ったのもそんなきっかけでした。
 
教育委員会から、「今年はこのソフトを使って申請書を提出するように」という指示が来たものの、担当の先生がパソコンを扱えず、私にお鉢が回ってくる形になったのです。
 
で、その時、職員室で使われていたマシンは、OSがWindows95でした。
 
そもそもスペックが低い上に、MOドライブだのスキャナだのカードリーダーだのが接続され、ハードディスクの99%までが利用されていて。
文書を二つ以上同時に印刷しようとするとフリーズするし。
写真を一枚取り込めば「ハードディスクの空き容量が足りません。いらないファイルをクリーンアップ云々」と言われるし。
 
スキャナの意味ないだろそれ。
 
当然、そんなシステムなんかインストールできるわけがない。
仕方なく自宅に帰って自分のパソコンでやりました。
 
やってみると、あらかじめランタイムライブラリをインストールしなきゃならない、などの面倒な手順があり。(16年度。今年はない)
当時の環境はISDNだったので遅いこと遅いこと。
 
しかも、何度も接続が切断されてやり直し。
 
ようやくダウンロードしたものの、インストールにも何度も失敗。
 
やり方がわからなくて、用意された質問掲示板を見ようとしたら、そっちもつながらないというていたらく。
 
全国の学校から一斉にアクセスが集中したため、協会のサーバーがダウンしたとのことで、後日、提出期限を先延ばしする、という通知が教育委員会からありました。
 
ちょっと頭使えよ……。
 
たぶん、今年、各地の教育委員会でこのシステムを配布しているのはそういう事情なんじゃないかと思います。
 
で、何時間もかけて再インストールを繰り返し、ようやく動くようになったシステムで集計を終えたわけです。
 
ちなみに、教育委員会からの指示は、
「プリントアウト2部と、システムで作成したデータファイルを入れたフロッピーディスク1枚を提出せよ」
というものでした。
 
もちろん、フロッピーはこっち持ちで。
 
……データファイルをメールに貼付して送信するんじゃだめなのか。
 
仕方ないから、プリントアウトとフロッピーを封筒に入れて、教育委員会窓口まで提出に行ったわけです。
 
ところが、数時間後、授業中の私の所に教頭先生がやってきて。
 
「K村先生、今さっき、教育委員会から電話があって、もらったフロッピーの中、データが入ってないって」
「ええ? いや、ちゃんと、データを入れて、入ってるの確認しましたよ?」
 
もちろん、間違ったフロッピーを渡してしまうなんて事は……あるかもしれない。
私だし。
 
「とにかく、向こうでは入ってない、って言ってるし。もう一度出してくれる? すぐ出るかい?」
「いや、何しろ、自宅で作業したので……」
 
その時は、ノートパソコンは持って行っていませんでした。
校内にLANもないし、共用のプリンタもないし。
 
頭を抱えて戻っていった教頭先生でしたが、またしばらくしたらやって来ました。
 
「先生、先生のパソコン、OSはなんだい?」
「え? Windows Meです」
 
当時はそうだったんです。
 
教育委員会のは、XPなんだって。 それで、確かにデータは入ってたんだけど、読み込んだらレイアウトがぐちゃぐちゃで見られないって……」
「……そうは言われても……」
 
手の打ちようがありません。
 
結局、教育委員会で、XPを使って作り直してくれるとのことで落着。
 
95、98、Meにも2000にもXPにも対応しているように見えて実は互換性がない。
 
デジタルディバイド
 
で、本校に転任してからも、教科書事務担当の先生にはインストール方法がわからない、とかで、私が作業しています。
 
「去年インストールしてありますから」ですめば良いんですが、このシステム、毎年作り直されています。
なので、毎年インストールし直さなきゃならない。
 
提出する書類の様式は一緒なのに。
 
そして、バージョンアップしているはずなのに、これがおそろしく使い勝手が悪いのです。
 
例えば、仮に、一度作成した申請書に、冊数の誤りを発見したとします。
そこで、画面に表示された申請書の該当箇所をクリックし、訂正しようとします。
これができません。
 
申請書の訂正は、申請書を表示している画面ではできず、一度その画面を抜けてメインメニューに戻り、「需要数データ取込・入力」メニューに入り直さなければなりません。
これだけで、何度も画面上のボタンをクリックすることになるんですが。
 
もっとも、17年度のシステムでは、データを入力するためのソフトと、データファイル・プリントアウトを作成するためのソフトが別になっている、というすさまじい仕様でした*1から、一つのソフトでできる分だけ進歩した、と言えなくもありません。
 
で、教科書の必要数を修正しようとすると、
「受領証明書を作成済みの場合、データが削除されます」
という警告が表示されますが、受領証明書はまだ作っていませんのでパス。
 
で、編集画面の、必要数リストに表示された数字をクリックし、訂正しようとしますが、これができません。
 
訂正したい箇所を直接訂正するのではなく、
 
訂正したい箇所を選択する

画面下にある「編集」ボタンを押す

編集フォームが開く

編集フォーム上で数字を訂正した後、「保存終了」ボタンを押す
 
……という手順が必要なのです。
 
「需要数データ取り込み」というボタンもあります。
採用教科書会社というのはそれほど頻繁に変わるものではないので、昨年度のデータを取り込めれば話は簡単です。
児童数にしても、昨年度から一年進級しているわけですから、進級処理を自動でやってくれれば、転入学の分だけ修正すればいいわけです。
 
そこで、「取り込み」を選んで、昨年度作成したデータを読み込むと、
「17年度のデータです」
というダイアログが表示された後、画面の表示が「未取込」から「取込済」になります。
 
で、取り込んだデータを修正しようとすると、データが空。
 
実は、昨年度のデータを取り込むことはできないのです。
「取込済」って画面に表示されるのはフェイントです。
 
ぬか喜び。
やーい、ばーかばーか。
 
実際に取り込めるのは、今年すでに作ったデータだけです。
 
……何に使うんだ、その機能。
 
ようやく訂正を終了し、もう一度申請書を表示する画面に戻ります。
すると、申請書は表示されず、なぜか「出力するデータがありません」という警告が出ます。
 
実は、このソフト、申請する教科書のメーカーや数のデータを入力した後、さらに申請書を作成する作業が必要なのです。
 
教科書会社と必要な冊数は入力してあるんだから、そこから申請書を自動的に作成してくれればいいはずなんですが、なぜか手動で作業する必要があるのです。
 
で、さっきの「受領証データが削除されます」という警告の時に、受領証のみならず、一度作った申請書のデータが全部削除されているのです。
 
児童数データと学校の住所データは、変更しても大丈夫。
なのになぜか、冊数と教科書会社を変更する時には一度作った申請書が残らず削除されるという謎仕様。不可避。
 
つまり、申請書データは修正することができず、直そうと思ったら一から作り直さなければならない、ということです。
 
そして、その申請書を作成するためのメニューが、メインメニュー上に見あたりません。
実は、「受領数入力」メニューの奥に、申請書を作成するメニューが隠れているのです。
 
おかしいだろそれは。
 
前述の通り、教科書の必要数と申請数は同じであるのが普通ですが、その辺を一括で反映する手段がないため、手作業になります。
 
こうして、もう一度申請書を作り直して、ようやく訂正作業が完了。
 
申請書の数字をたった一つ訂正するのに、何十回もボタンを押さないとならないという、素敵すぎる仕様になっているわけです。
 
また、メニューの分類も、どうして申請書の作成作業が「受領数入力」メニューの中にあるのか、とか、そもそもなぜ作成と編集と印刷がそれぞれ別のメニューの中にあるのか、とか、疑問満載。
 
とにかく、ありとあらゆる点で人間の直感的理解に反逆するインターフェイスになっています。
 
このソフトについて、教科書協会では、使用法を示したテキストも配布しています。
 
もちろんPDF形式。印刷が前提ですね。
ただし、152ページありますので、印刷の際はご注意下さい。
 
……バカだろ、お前ら。
 
どう考えても、説明に百ページもかかるような巨大なソフトじゃないんですけど。
 
読んでみると、インストール方法の説明に始まって、
「スタートメニューから起動する方法」
「デスクトップのショートカットから起動する方法」……
 
このソフト、インストールすると、無断でデスクトップにショートカットを作成し、無断でスタートメニューに自分を登録するのです。不可避。
 
どこのアドウェアだ、お前は。
 
その後、操作の説明に移るのですが、これが、画面上のボタン、メニューを順番に説明していく、というやり方で。
 
どうやら、作業手順に沿った説明をする気はまるきりないらしく、
「メインメニューについて」>「ツールバーメニューについて」>「メインメニューの操作について」
……という、読者の理解を妨げるために工夫されたとしか思えない順番で説明が進みます。
 
ちなみに、ツールバーメニューでできるのは、
「全て削除」(入力済みのデータを全て削除する)

「ヘルプ」
のみ。
 
しかも、ヘルプで見られるのはバージョン情報だけ。
 
……操作説明の最初に書くような内容なのか、それ。
 
しかし、最初は、「どこの無能業者に開発を依頼したんだ、これは!」とか思っていたんですが、こうしていろいろ触ってみると、そうではない気がしてきました。
無能ではなく、これはもはや開発者の悪意を感じます。
 
ただ無能なら、去年も今年も同じようなソフトであるはず。
 
それならば、
「使いにくいけど、まあ、去年もやったから」
……と、少なくとも「慣れる」ことは可能です。
 
それなのに、毎年毎年インストール方法から操作方法まで違っていて、しかも毎回毎回神経を逆なでするような内容だというのは、作為的なものであることは明らかです!
 
きっと、教育界に敵意を持ったエンジニアが、年度末の忙しい時期を狙って、教員の業務を妨害すべく開発したに違いありません。
これは、日本の教育力を低下させようとする、ユダヤ国際資本の謀略だ! Terrible!
 
……しかし、これ、開発費に何百万だか取られたって噂なんだけど……。
毎年開発し直してる、ってことは、その都度開発費を払ってるのかな……?
 
誰ぞ有能な人が、もっと使いやすいシステムを開発して、Vectorとか窓の杜で1000円くらいで売るってのはどうよ。
潜在的なニーズはかなりあると思うんだけど。*2
 
勇敢で有能なエンジニア諸氏!
陰謀機関と戦うため、起て!
 
……ていうか、こんな奇怪な独自ソフト作るのやめて、Excelのワークシートにして配布すれば百倍効率がいいはずなんだが。
何か、Excelでやっちゃいかん理由があるのかね。

*1:ワープロソフトで言えば、テキストを入力するためのソフトと、印刷プレビューを見たり印刷したりするためのソフトが別々になっているようなもの。
扱うのは同じファイルなのに。

*2:どうやって各学校に広告するか、という問題はありますが。