学校では、時折、研究授業というものがあります。
趣旨は様々ですが、要するに、いろいろなお客さんが見に来る授業です。
保護者以外の人が来る授業参観、と言ってもいいかもしれません。
具体的には、学校外から指導主事などの偉い人が視察に来たり、他の学校の先生が勉強のために見に来たり。
知らない人が教室にぞろぞろやってきて、子どもたちも緊張したり興奮したりしますが、授業する側にとってはなおのこと緊張する行事です。
授業参観と違い、あらかじめ指導案を書いてお客さんに配ってあり*1、どんな考えの下にどんな目的で授業を構想し、どのような流れを想定しているのか、明らかにしてあるわけです。
その状態で授業が失敗すると、その後の授業研究会であれこれ言われることになります。
(授業参観で見られるのは主に子どもだが、研究授業で見られるのは主に教師だ、と説明されます)
さて。
私が小学3年生の時のこと。
研究授業がありました。
教科は国語。単元は、「小さな犬の小さな青い服(光村図書:3年国語)」でした。
授業者だった担任の先生は、その年採用されたばかりの男の先生。*2
で、その前日のこと。
担任から、明日の研究授業についての説明がありました。
「……と、ここで先生がこう質問するから。そしたら、〜〜が〜〜答えるように」
説明っていうか打ち合わせ。
先生、それ八百長。
……まあ、当時は今と立場が違いますから、なんでそんなことをするのかよくわかりませんでしたけど。
「そんなこともあるのかなあ」くらいに思っていました。
恥ずかしながら、「小さな犬の小さな青い服」がどんな話だったか、私はもうほとんど忘れてるんですが。(現在の光村図書の教科書には、この教材は載っていません)
ただ、私に割り当てられた発問は、
「どうして、うさぎはねずみ(犬の名前)を見ても驚かなかったのか」
というようなものでした。
で、答えは、確か、
「怖い犬には見えなかったから」
とかなんとか。(うさぎの台詞にそう書いてあるんだったと思います)
うん、そこそこ頭の良い子の役っぽいぞ、小3の自分。(中の上くらい?)
……なんだ役って。
まあ、その時、私としては特にその説に異論はなかったので、そのまま納得していたんですが。
そして本番。
スーツを着たお客さん達。
スーツを着た担任。(珍しく)
授業はほぼ予定通り滞りなく進みました。
そして。
「どうして、うさぎはねずみを見ても驚かなかったのだろう?」
「はい!(挙手)」
「はい、K村」
「はい!(起立)」
……と、その時、まさしく天啓のごとく私(小3)の脳裏にひらめくものが。
「いつも森の中で見ていたからだと思います!」
着席。
アドリブだ、アドリブだよ自分(小3)!
……いや、確か、本文中にそういう記述もあったと思うんですよ?
で、着席した瞬間に「台本」を思い出した私(小3)。
(あ、しまった!)
そこでもう一度起立。
「あと、怖い犬には見えなかったからだと思います!」
もう一度着席。
偉い、偉いぞ自分(小3)!
すごく不自然だけど!
翌日担任が、
「昨日はみんなお疲れ様。見に来ていた偉い先生たちからは、
『子どもたちから予想通りの反応があってよかったですね』
……って言われたぞ。*3
いろいろ、予定外のこともあったけどな。
特にK村」
なんか名指しされました。
まあ、無理もない……と、言えなくもないですか。
でも、その時の私、自分が悪いことをしたとは全然思ってませんでしたけど。
(あー、先生が言った答えを先に言って、その次に自分の答えも言えば良かったかなあ。……立ったままで)
くらいで。
うん、悪くない、悪くないぞ小3の自分。
悪いのは担任だ。*4
まあ、これは極端なケースではありますけど、
「今日は、みんなで新聞作りをします」
「えー? また作るの?」
みたいな話とか、
「わかる人はパーで、わからない人はグーで手を挙げて下さい」
とかいう例はけっこうあるみたいですね。
全員グーだったらどうするんだろうな。
リハーサルそのものでなくても、ちょっと似たような活動を含む授業を先にやっておくとか。
しかし、やっぱりそういうのは良くないなあ、と、自分の経験を元に考える次第です。
いつ何時、予定外の事態が起こるかわかりませんからね。
特にK村(小3)。
そんなわけで、私が研究授業をする時は、担任はもちろん授業計画を練りますが、子どもたちはぶっつけ本番、という感じでやることにしています。
それで毎回失敗して、授業研で相当基本的なところをつっこまれるんだけどな。
……精進します。