紀元は二千六百年♪(作詞:増田好生 作曲:森義八郎)

読売ニュースから。
 
三笠宮寛仁さま、女性天皇容認に疑問…会報にエッセー
 
私自身のこの問題に関する意見は、
http://d.hatena.ne.jp/filinion/20050728/1122529521
……で、述べたとおりですが。(……とおりなのか?)
今回、個人的に心引かれたのは次の部分。

寛仁さまはまず、「万世一系、一二五代の天子様の皇統が貴重な理由は、神話の時代の初代・神武天皇から連綿として一度の例外も無く、『男系』で続いて来ているという厳然たる事実」と強調。

百二十五代……。
 
神武天皇と言えば、鵜葺草葺不合尊(うがやふきあえずのみこと)と玉依毘売(たまよりひめ)の息子さんです。
 
ちょっとさかのぼれば、天孫降臨のニニギの命とか、伊勢神宮の祭神・天照大神とかに行き着きます。
 
いやあ、夢がありますね。

国民一人一人が、我が国を形成する『民草』の一員として、二六六五年の歴史と伝統に対しきちんと意見を持ち発言をして戴(いただ)かなければ、いつの日か、『天皇』はいらないという議論に迄(まで)発展するでしょう。

いや……。
皇族の方々の見解としては、やっぱり天皇制の歴史は「二六六五年」なんでしょうか。
考古学的に考えると、縄文時代天皇制が始まったことになりますね。
 
狩猟採集社会で天皇制。
縄文土器
貝塚
三種の神器
 
いや、実にロマンがありますね。
 
民草の一人としては、ぜひ、皇族の方のこういった貴重なご意見を拝聴する機会が増えれば、と、切に願うものです。
 
以下雑感。(いや、全部そうですが)
高校時代、ミヒャエル・エンデの「はてしない物語」を読みました。本屋で。
(余談ながら、「はてしない物語? ああ知ってる知ってる、映画で見た」とか言わないで下さい。映画「ネバーエンディング・ストーリー」は、内容的に全然別物のハリウッド映画(罵倒語)です)
 
その中に、偉大な力を持ったお守り、「おひかり」アウリンが出てきます。
これは、おとぎ話の世界ファンタージエンの女王「幼ごころの君」の権威を象徴するもので、それを持つ者は誰からも傷つけられることはありません。
 
まあ、黄門様の印籠とかと違って、単なる権威の象徴ではないことが、物語の終盤で示されるですが。
 
しかし、アウリンと印籠の何よりの違いは、
「その権威によって誰かに命令を下すことはできない」
……ということです。
 
これを読んだ時に私が思ったのは、(話の流れでおわかりでしょうが)天皇制のことでした。
 
日本国民であれば、おおかた誰でも陛下には一定の敬意を払うものです。
古い本ですが、「ジャパニーズ・マインド(講談社)」の中で、著者、ロバート・C.クリストファーは、「過激思想を抱いた学生でさえ、皇族に対する時は静かに敬意を表した」というようなことを述べています。
 
……しかしながら、それは、陛下が、象徴天皇制の中で*1、国政に対して関与せず、発言も控えておいでだからではなかろうかと。
 
陛下自身が黙っていてもみんな平伏するけど、そこで万一、陛下ご自身が「頭が高い!」とでも言おうものなら、むしろ立ち上がって反抗する者が出てきかねない、そんな権威。
それが天皇の権威であり皇族の権威ではなかろうかと。
 
思えば、天皇制全盛の戦時中だって、昭和天皇ご自身よりも、その意向を代弁する(と称する)人々ばかりが国民を指揮していたわけですし。(だからこそ、戦後も陛下が権威を保ち続けられたのだと思いますが)
 
寛仁殿下の玉文を拝読して思い出したのはそんなことでした。
 
……象徴天皇制万歳。
 
*追記
ええと、アウリンと違って、菊の御紋はそれを掲げて他人に命令しまくっていた人もいたわけですが、まあそれはその。
まあ、言わんとするところはそこではないので。
 
それと、皇室典範の改正、という問題について、一番影響を受けるはずの天皇家や皇族の方々の意見が聴取されない、というのは、政治とか思想とかを抜きにして、人間として納得がいかない気がします。
そして、はなはだ僭越ながら、それは陛下ご自身も同じ思いでいらっしゃるのでは無かろうかと推察致します。*2
天皇は国政に関与しない」「でも皇室典範は国政の一部」という、巨大で小さな法のすきまに落ち込んでしまい、それにみんな気付いているのに誰も助ける気配がない現状に、私的な立場から意見を述べようとした三笠宮殿下のことを非難することはできないと思います。
 
私も、意見を言うこと自体はまあいいかなー、と思うんですけど。
 
まあ、内容があまりにあんまりだったのでつい。
 
あれですよ。
意見を言う、というのは、反論にさらされることを覚悟する、ということと常に対であるべきなのです。

*1:象徴天皇制の下で」と書こうとして畏れ多くて書き直しました。天皇機関説不敬罪にあたります。

*2:天皇人間宣言