シナリオ「生きるため、守るために」と、自分のシナリオ分析。 

 ……ハッピーエンド……ではないな。明らかに。
 いや、そもそも、鷹安氏と作ったシナリオなのですよ。
「今度天羅をやるんだけど、せっかくだからぜひダークなシナリオにしたい」と。
 
 鷹安原案だと、
「山賊にさらわれた姉を少年と一緒に助けに行くと、姉さんはすでに陰陽術かなんかで山賊の首領の体と一体化されててさ。奴の胸の辺りに姉さんの顔が見えたりしてるわけよ。
 で、『げへへ、オレを殺せばお前の姉さんの命もないんだぜ?』『早く殺して! 私ごと斬って!』みたいな」
 だったんですが。
 
「悲劇が固定されているのは納得いかんですよ」
「そうか?」
「やっぱり、TRPGってプレイヤーの行動が結果に影響を及ぼすのがキモだから。どうせ悲劇になるなら、プレイヤーの判断の結果として悲劇にならないと。ほら、その方が後味の悪さも倍増だし」
 
 ……などと話しながら、(この辺、RPGマガジンの「ダークマスター講座」とか、当時フレーミング中だった「吟遊詩人ダークマスター」への反発とかの影響があります。 FF7でエアリスの死が確定しているのにも当時納得いかなかった気が。「たとえどんなにわかりにくくて不可能に近くても、どこかに抜け道を残しておくべきだ」みたいな)「いかにして必要な情報を提供し、グッドエンドへの道を残しつつ、なおかつそれとは違う方向に誘導するか」を練ったわけです。
 
「何かというと『早く先に行かないと!』って叫べば、きっとみんな『まあ待て、落ち着くんだ』みたいに止めてくれると思うんだよね」
「『勇吉は行こうとします』って言えば止めてくれるし、『勇吉は行ってしまった』って言えば後を追ってくれると思うんですよ。古文書をのんびり調べたりしないで」
 
 拾郎氏に言わせると、「この時以来、TRPGをやる時は警戒するようになった」そうで。「まさか姉ちゃんが怪物になってるとは思わないよー、みたいな」
 
 ……いやほら、そもそも鷹安氏が「ダークにしろ」っていうからしたんですよ?
 それに、マスターしたのは鷹安氏で、私は手を汚してないし
 
 ……。
 
 このシナリオ、「妖に支配されたお鶴が勇吉を手に掛けてしまう」とか、「お鶴は山賊たちに陵辱されている」とかだと、自分の中では受け付けられないシナリオになるんだけど。(常識的に考えると、山賊が若い娘をさらったんだからその辺は明白なんだけど、そういう設定はしなかった気がする。プレイヤーはそう判断したかも知れないけど)
 ……それに、村にいたはずの「他の若い娘たち」がどうなったのか、については、その当時も矛盾に気づきながら触れずに放置したし。
 
 先のブルーローズでも、調査隊のメンバーであるNPC2人は、生け贄にされそうになりつつ結局生き延びるんですな。
 
 自分、依頼人が裏切り者でしたー、みたいな話はしょっちゅうやるし、悪役は徹頭徹尾嫌みで憎たらしく演じるけど。
 
 でも、悪人は実際にシナリオ中に悪事をやれないんですわ。前から気づいてたんだけど。
 
 まあ、窃盗・傷害は平気でやるし、世界を滅ぼしかねない悪事を企んでいたり、人質を痛めつけたり、「奴に殺された人間は数え切れません」みたいな話が情報として出てきたり、明らかに殺人狂な人に大量破壊兵器を与えたり、は、するんですが。
 実際シナリオ中で人を殺すことはほとんどできないという腰抜けっぷり。GMが。
 エキストラっぽい人たちは死ぬこともあるけど、それも一般市民はだめで、兵士とかでないと。大量殺戮なんてもってのほかですよ。
 殺人とか、「誰かの思い出の品」を破壊するとか、18禁な展開とか、そういう「取り返しの付かない悪事」ははたらけないのですよ。
 ……そう考えるとすげえモラリストだと思うんですが! どうですか! 違いますかそうですか。
 全年齢指定〜R14指定、せいぜいR16指定くらいのシナリオ、って感じだと思うんだけど。自分では。
 
 で、悪役は必ず最後は死ななければならない。無念そうに。
 
 この話だと、悪役は居ないんだよな。
 私の心の中では、お鶴と勇吉が二人で去るのがトゥルーエンドなんだけど。
 もちろん、妖を封印して、「勇吉が大きくなるまでは俺たちが守ってやる」でもいいんだけど。
 
 ……やっぱりあれか、「シナリオ的にはハッピーエンドがあるしー」っていうのが免罪符になってるのか。
「自分でやらなきゃ(GMなら)バッドエンドもオッケーですか?」っていう拾郎氏の分析がやっぱり正しいんでしょうかね。

 結論(自己分析:K村シナリオとは)
・悪人は憎らしい。
・しかも自分は正しいと信じている。
・でも大抵腰抜け。
・味方に見せかけた裏切り者がいることは普通。
・でも、悪が栄えたためしはない。
・ただし、善人が不幸になることは時々ある。
・その場合、「トゥルーエンド」がマスターの脳内にはある。
 
 ……こうしてみると困ったもんだな。
 
 ちなみに鷹安氏は、悪役はむしろつべこべよけいなことは言わない、ナチュラル悪役が好きだとか。
「『ひゃはは』とか笑う悪役が好き。『オレぁ戦うのが好きなんじゃねえ、勝つのが好きなんだよぉッ!』とかいうの。
 でもフレイザード(ダイの大冒険。件の台詞を言った本人)はだめ。奴は『自分のアイデンティティを確立する』という意味があってそれをやってるから」
 
 考え方はいろいろですな。
 私だって、なぜ嘘イデオロギーに固まった悪役をやるかと言えば、そうでないとやってて面白くないから、に過ぎないですから。
 
「ご安心なさい。それが神の御心なのですよ」
「なぜわからぬ、我々は世界に秩序をもたらそうとしているのだということが!?」
「奴らは階級の敵だ、同志。構うことはない」
「アジア人によるアジアを。皇民化された世界を!」
 ああ楽しい。