立て、自由の戦士達よ!(お勧めゲーム)

 「プラウダ(真実)」と「イズベスチヤ(報道)」は、どちらもソヴィエト共産党機関誌の名前である。
 このことから、こんな冗談が生まれた。
 「プラウダはイズベスチヤではなく、イズベスチヤはプラウダではない」
 
 学校のことをあれこれ書いていたんだけど(30人学級とか生き物を飼うこととか)、内容的に重くてくどくなったのでやめ。
 そのうち手直ししてから載せるかも知れません。
 
 そんなわけで、今日は趣味に走ったお勧めゲーム紹介。
 
 PS2の、「フリーダム・ファイターズ」です。
 
 これは、アメリカのゲームの移植です。
 ジャンルとしては戦争(正確にはレジスタンス)を題材にした3Dアクションゲームで、ゴーストリコンとかメダルオブオナーとかに近いんでしょうか。
 
 ……実は、この手のゲームをやるのは初めてなので、ゲームとしての出来不出来を語る資格はないのです。
 
 じゃあ、なんでお勧めなのか?
 
 まず、公式サイト(http://www.japan.ea.com/freedomfighters/)をご覧下さい。
 画像が多くて重いけど。
 
まず、オープニングムービー。(公式サイトのサンプルムービーから見られます)
 

1945年
 ソヴィエト軍が原爆を投下し
 ヨーロッパにおける第二次世界大戦終結する
 
1953年
 ヨーロッパ唯一の非共産主義国だったイギリスが
 遂に共産主義ブロックに参加

 架空の世界史ですよ!
 ソヴィエトが世界最初の核保有国となり、ベルリンが世界最初の被爆都市になった世界!
 ムービーを見ればわかるとおり、こういうのがこの後も1996年のメキシコ共産党大勝利、2001年の大統領暗殺未遂、「そして、昨日―」まで続くんです。
  
 いわゆる「架空戦記」にはほとんど興味がないんですが、「あ・じゃ・ぱん」*1とか「プロテウス・オペレーション」*2とか「多元世界の門」*3みたいな、架空世界史は大好きで。
 (「架空戦記」は、「戦争にどう勝つか」が主で、「戦争に勝ったらどうなるか」が浅い気がするので食わず嫌いなんです)
 
 ゲームの舞台は架空現代のニューヨーク。
 ある日突然侵攻を開始したソヴィエト軍の前に、ニューヨークはたやすく占領されてしまいます。
 そこで、主人公の弟は、全くの不運な偶然からスパイの嫌疑をかけられ、ソヴィエト軍に連行されてしまいます。
 主人公は、とまどううち、ソヴィエト軍と戦うレジスタンスと出会い、はじめは弟を救うため、やがては自由の国アメリカを解放するために戦うのです。
 そう、Freedom Fighterとして!
 
 いや、まあ、ゲーム開始時の状態で、アメリカ人が呑気すぎる(我々の世界のアメリカとほとんど同じ文化)ってのが、架空史としての不満点ではあるんですが。
 ヨーロッパもメキシコも共産化してキューバにも核ミサイルがあるんだったら、レッドパージの時以上に偏執的でヒステリックな文化が支配してると思うんですが。
 でも、それじゃあゲームにならないんだろうし、どのみち侵略以前のアメリカ文化なんて描かれる時間がほとんどないからいいんです。
 
 素晴らしいのはソヴィエトの描き込みようです。
 道ばたに転がされ、警官達がバリケードに使っているコンテナ(アメリカ警官は自由のために立ち上がるのです!)をふと見ると、「CCCP(ロシア語のSSSL。ソヴィエト社会主義共和国連邦の頭文字)」のロゴと、真っ赤な星印が! 細かい!
 
 そして、ステージをクリアすると表示されるムービーが実に秀逸です。
 公式サイトにサンプルムービーがあるので是非見て下さい。……これを見て私は購入を決意したんです。
 ムービーは人間ドラマを描いたりスペクタクルなシーンだったりは全然なくて、ただのニュース映像なんですが。
 ……ただの、クレムリンが制作して、占領したニューヨークのテレビ局から全米に向けて放映しているニュース映像。
 
 のっけから、ロシア人のキャスターが
「みなさんにおなじみの以前のニュースキャスターは、アラスカのトレーニング施設での再教育プログラムが終了すれば、またこの番組に登場する予定です」
 おお、シベリアだけでなくアラスカもソヴィエトのトレーニング施設になったのですね!
 
 コメントを求められた軍高官は
「奴らはつかまえ次第死刑にしてやります!
 ……ああ、もちろん、裁判の後に、ですが」
 裁判の前に判決が決まっているとは素晴らしい迅速さです!
 
 ワー! 万歳!万歳! 革命万歳! ソヴィエト万歳! 共産党に栄光あれ!
 
 ……素晴らしすぎます。
 ニュース、下に黄色い小さい字で延々別なニュースが流れていて、それがまた同じくらい素晴らしい凝りよう。
 「正確なニュースはこのチャンネルだけで入手することができます。このチャンネルを見ることは義務となります。このチャンネル以外の放送はほとんどの地域で停止され、登録された市民だけが視聴することができます」とか、あからさまに怪しい内容。
 最初のニュースで
「中西部で大規模な雷が発生する可能性が……」とか言ってたので、
「……電磁パルスをともなうような雷じゃないのか?」と思ってたら、次のステージクリア後には
「……の放射性降下物は、10000人以上の反逆者を死に至らしめました」。
 ……やっぱりか。
 
 あえて文句を言えば、全般にロシア人が悪人顔すぎ。
 ニュースキャスターくらい、かわいいロシア美人でもいいと思うんですが(設定では美少女なんだけど……)。
 でも、それすら「ああ、党中央が政治的忠誠度を優先して人選を行ったから、顔は二の次になっちゃったんだな」とか脳内で補完できるくらい素晴らしい出来です。
 
 で、主人公は、レジスタンスの一員としてこいつらと戦うわけです。
 
 彼らは、侵略に呼応して立ち上がったアメリカ市民達なんですが、主人公はともかく、仲間達は最初からアジトにショットガンだの火炎瓶だのを大量に備蓄しています。
 ……アメリカ人って、こんなに普段から敵の侵略に即応できる体制を整えてるんですか?
 
 各ステージにはいくつかの副目標がありますが、主たる目標は、目的となる施設を占拠し、その印として旗を掲げること。
 ……っていうか、実際には、敵の目をかいくぐってフラッグポールまでたどり着き、旗を揚げれば勝利、ステージクリアです。
 システム面から見て、旗を掲げることそのものが勝利条件なわけです。
 
 ……何の旗かって?
 
 そりゃあ決まってるじゃないですか。
 自由と正義の象徴、スターズ・アンド・ストライプスです!
 
 「星条旗をかかげること」すなわち勝利なのです!
 
 ワー! 万歳!万歳! 自由万歳! アメリカ万歳! ああ、星条旗よ永遠なれ!
 
 ……なんというか、ソヴィエト側の描写は、「ああ、誇張してるんだな」ってわかる部分があるんですが(たぶん)。
 アメリカ側については、「……ひょっとしてマジ?」という不安がぬぐい切れません。
 
 大丈夫なのか制作者達。ていうかアメリカ。
 
 ……ともあれ、難易度調整もついており、ノーマルではかなりきついんですが、ビギナーに下げれば私のようなヌルゲーマーでもクリアできます。
 ていうか、走りながら銃を乱射するアクション映画的戦闘でなんとかなっちゃいます。
 
 時間が無くて実はまだ序盤なんですが、ほんとに素晴らしい。
 
 日本全国の同志のみなさん、是非購入しましょう。
 
 「今なら並ばずに手に入れることができます(ニュース番組、字幕から)」
 
 アメリカ人とソヴィエト人が、互いに祖国自慢をして張り合っていた。
 
 アメリカ人が言った。
「なんといっても、アメリカには言論の自由があるのが素晴らしいところだ。
アメリカでは、たとえホワイトハウスの前でアメリカ大統領の悪口を言っても、逮捕されるようなことは決してない」
 
 ソヴィエト人が笑った。
「なんだそんなことか。
 もちろん我が国にも言論の自由がある。
 ソヴィエトでも、たとえクレムリンの前でアメリカ大統領の悪口を言っても、逮捕されるようなことは決してない」

*1:矢作 俊彦の小説。太平洋戦争後、日本が東西に分割統治され、東京のある東側は社会主義国家になっている世界(ISBN:4048733478

*2:ジェイムズ・P. ホーガンのSF小説。(小隅 黎訳)第二次大戦で日独が大勝利を収め、ドイツの侵攻がアメリカにも及びつつある1970年の世界……他(ISBN:4150107408

*3:ロバート・シルヴァーバーグのSF?。(冬川 亘訳)立風書房アステカ帝国が征服されず、西欧に比肩する文明国となっている世界。 ……中学の図書室で読んだんだけど、絶版なの?